Ikken 建築と家具

地形と直線の対話奈良・東大寺二月堂周辺を散策。碁盤の目のように整然と配置された都市とは対照的に、この辺りでは地形に沿うように道が引かれ、それに合わせて建物が配置されています。そのため、さまざまな角度が交わり合い、実に魅力的な町並みが生まれて...
29/06/2026

地形と直線の対話

奈良・東大寺二月堂周辺を散策。

碁盤の目のように整然と配置された都市とは対照的に、この辺りでは地形に沿うように道が引かれ、それに合わせて建物が配置されています。そのため、さまざまな角度が交わり合い、実に魅力的な町並みが生まれています。

韓国の伝統集落では、地形に沿って塀までもが緩やかな曲線を描くことが多いのですが、二月堂裏参道では、直線を用いながら坂道の複雑な地形に立体的に寄り添っています。直線同士が直角ではなく交わることで、思いがけない三角形や不整形の余白が生まれ、それらが坂道と呼応しながら、町並みに独特の緊張感と豊かさを与えています。

自然の地形を無理に整えるのではなく、直線という人工の幾何学によって地形と対話する。その繊細な関係性こそが、この場所ならではの美しさを生み出しているように感じました。
吉田隆人

Casa BRUTUS 7月号『間取りの教科書』に掲載していただきました。今回のテーマは「寸法」です。事務所名である「ikken」は、独立当時の私の身長が一間(1818mm)だったことに由来しています。そんな名前にちなみ、今回は尺貫法や寸法...
20/06/2026

Casa BRUTUS 7月号『間取りの教科書』に掲載していただきました。

今回のテーマは「寸法」です。

事務所名である「ikken」は、独立当時の私の身長が一間(1818mm)だったことに由来しています。そんな名前にちなみ、今回は尺貫法や寸法をテーマに取材していただきました。

私たちは住宅設計において、909mmを基本グリッドとし、303mmの倍数を基準に空間を考えています。そのため職業柄、普段の生活でも3で割り切れる数字や303の倍数を見ると、つい反応してしまいます。

この寸法は、日本の木造建築で受け継がれてきた尺貫法や建材寸法とも深く結びつき、職人さんとの共通言語でもあります。そのような考え方も、誌面で分かりやすくご紹介いただいています。

ぜひご覧いただけましたら嬉しいです。

掲載いただいた住宅の設計・施工は以下の通りです。

・設計:ikken設計室 吉田隆人、的場真巳
・構造設計:下山建築設計室 下山聡
・施工:ヤマサキ建築事務所 松田優一
・大工:大野正光、中辻雅行、升田達哉
・家具:ikken家具工房 山中清雄、手摺:大西仁
・造園:園三 田畑了


『&Premium』7月号の「仕事と生き方。」特集で取材・掲載していただきました。今回は建築作品ではなく、「働き方」や「仕事との向き合い方」について取材していただきました。改めて自分自身の仕事について考える、貴重な機会をいただけたことに感謝...
20/06/2026

『&Premium』7月号の「仕事と生き方。」特集で取材・掲載していただきました。

今回は建築作品ではなく、「働き方」や「仕事との向き合い方」について取材していただきました。改めて自分自身の仕事について考える、貴重な機会をいただけたことに感謝しています。

取材でいただいた問いは、
「働きたくなる仕事場をつくるために、大切にしていることは?」

私にとって理想の仕事場は、たくさんの人が出入りする、風通しのいい場所です。

家具職人さん、現場監督さん、大工さん、左官職人さんなど、ものづくりに関わるさまざまな人たちが自然と集まり、気軽に話ができる場所であってほしい。そんな思いから、事務所の中心には大きなキッチンを設け、食事を囲んだり、ときにはお酒を酌み交わしたりしながら、日々コミュニケーションを育んでいます。

設計は、図面だけで完結する仕事ではありません。クライアントがいて、つくり手がいて、初めて建築は形になります。だからこそ、関わる人たちが一つのチームとして信頼関係を築きながらものづくりを進めることが、結果として質の高い建築につながると考えています。

詳しくは、ぜひ『&Premium』7月号をご覧いただけたら嬉しいです。

また、2026年9月19日・20日には、MITTANさんとの共同オープンアトリエを開催する予定です。
ぜひ事務所にも遊びにいらしてください。



南禅寺界隈。朝一番で、大工工事が追い込みに入っている現場へ顔を出し、その後、南禅寺の天授庵を訪ねました。今回の目的地は天授庵と對龍山荘でしたが、せっかくなので南禅寺方丈や、塔頭のひとつである金地院も欲張って巡ってきました。金地院にある、小堀...
28/05/2026

南禅寺界隈。

朝一番で、大工工事が追い込みに入っている現場へ顔を出し、その後、南禅寺の天授庵を訪ねました。今回の目的地は天授庵と對龍山荘でしたが、せっかくなので南禅寺方丈や、塔頭のひとつである金地院も欲張って巡ってきました。

金地院にある、小堀遠州作の茶室「八窓席」は、建築家としての遠州の遊び心に満ちていて、とても魅力的です。昨年は同じく遠州作の、十三の窓を持つ「擁翠亭(十三窓席)」を訪ねましたが、それとはまた異なる面白さがありました。

特に印象的だったのは床の間のつくりです。一見すると通常よりも浅い床の間なのですが、茶室の裏側へ回ると、より簡素な空間が設けられており、その壁を利用することで、奥行き18センチほどの床の間と違い棚が成立しています。まるで小さな壁面収納家具のような可愛らしい設えで、遠州の自由な発想の豊かさに感心させられました。

そんなふうにいくつか巡っているうちに時間が過ぎてしまい、對龍山荘は次回へ持ち越しとなりました。
茶室は撮影出来ないので、売店で購入した写真です。

吉田 隆人

家具デザイン週間。日々の仕事の中で、週に1日は家具デザインに充てることを目標に掲げているものの、実際には建築設計に追われ、なかなか思うようにはいきません。そんなこともあり、今週は溜まっていた家具デザインに集中的に取り組んでいます。屋久杉を使...
26/05/2026

家具デザイン週間。
日々の仕事の中で、週に1日は家具デザインに充てることを目標に掲げているものの、実際には建築設計に追われ、なかなか思うようにはいきません。そんなこともあり、今週は溜まっていた家具デザインに集中的に取り組んでいます。

屋久杉を使った立礼式のお手前机や、3mの栂材を用いたテーブルなど、特徴的な材料を前にしながら、人の動きを想像してデザインを決めていきます。そして、協働する家具職人さんと対話を重ねながら、細部を練り上げていきます。

立礼式のお手前机をデザインするため、デスクの脇には実際にお手前で使う柄杓を置いています。ふと手に取り、しげしげと眺めていると、そのディテールのあまりの美しさに驚かされます。先人たちの卓越したデザインに刺激を受けながら、意欲的に設計を進めています。

写真は家具のディテールと、これから製作に使われる木材です。

奈良に行く予定があったので、奈良在住のスタッフにおすすめの寺社を尋ねてみました。いくつか挙げてもらった候補の中から、今回は伺いやすそうな浄瑠璃寺と新薬師寺を訪ねてみることにしました。新薬師寺のほうは、すぐ近くで住宅の現場があったこともあり、...
04/05/2026

奈良に行く予定があったので、奈良在住のスタッフにおすすめの寺社を尋ねてみました。いくつか挙げてもらった候補の中から、今回は伺いやすそうな浄瑠璃寺と新薬師寺を訪ねてみることにしました。

新薬師寺のほうは、すぐ近くで住宅の現場があったこともあり、これまでに何度か訪れたことがありましたが、浄瑠璃寺は今回が初めての訪問です。

どちらも本堂は非常に美しいプロポーションをしており、外観を眺めているだけで満ち足りた気持ちになります。静かに佇むその姿からは、時代を超えて受け継がれてきた均衡の美しさが感じられました。

浄瑠璃寺は平安時代後期、1157年頃に建てられたとされ、国宝である九体の阿弥陀如来像が横一列に並ぶ光景は圧巻で、堂内に足を踏み入れた瞬間、空気が変わるのを感じました。一方の新薬師寺はさらに時代が遡り、奈良時代(710年ごろ)に創建された建物で、国宝の薬師如来坐像と十二神将立像が円形の仏壇上に配置されています。当初は本堂ではなく、修行のためのお堂として建てられたという背景も興味深いものです。

仏像好きのスタッフに勧められただけあり、どちらの寺も、ただ建築を観るというよりも、仏像そのものに引き込まれていくような体験となりました。普段のように建築と庭との関係性を読み解くというよりも、ひたすらに仏像の美しさと向き合う時間となりました。

東大路通を自転車で走っていると、京都大学の傍らに建つアンスティチュ・フランセ関西(旧・関西日仏学館)の3階部分にあるルーフバルコニーが、いつも気になっていました。あの魅力的なスペースは一体どのようになっているのか、いつか見てみたいと思ってい...
28/04/2026

東大路通を自転車で走っていると、京都大学の傍らに建つアンスティチュ・フランセ関西(旧・関西日仏学館)の3階部分にあるルーフバルコニーが、いつも気になっていました。
あの魅力的なスペースは一体どのようになっているのか、いつか見てみたいと思っていたのです。

すると現在開催中のKYOTOGRAPHIEの会場の一つになっているではないですか、これはこの機会を逃してはいけないと思い、早速訪れてきました。

調べてみると、この建物はオーギュスト・ペレの弟子であるレイモンド・メストラレと、建築家・木子七朗の設計により、1936年に建てられたものだそうです。

バルコニーと内部空間の関係性、窓とドアが生み出す美しいリズム。やはり思っていた通り、そこには上品で素晴らしい空間が広がっていました。

吉田隆人

長流亭を後にし、そのまま京都へ帰るのも少し惜しい気がして、近くに興味深い集落はないだろうかと探してみました。そこで見つけたのが、北前船で江戸期に大いに栄えた、加賀・橋立の北前船船主集落です。この集落で昼食をいただいたあと、まずは北前船の里資...
26/04/2026

長流亭を後にし、そのまま京都へ帰るのも少し惜しい気がして、近くに興味深い集落はないだろうかと探してみました。そこで見つけたのが、北前船で江戸期に大いに栄えた、加賀・橋立の北前船船主集落です。

この集落で昼食をいただいたあと、まずは北前船の里資料館へ向かいました。私は司馬遼太郎の『菜の花の沖』が好きなこともあり、「北前船」と聞くと、つい胸が高鳴ります。

資料館では、船の構造や、長い航海のなかでどのような生活空間が船内につくられていたのか、そして船箪笥などの道具類まで、じっくりと見学しました。さらに、往時の繁栄を物語る贅を尽くした建築にも触れ、その余韻のまま町歩きへと向かいます。

橋立の町並みは、いわゆる漁師町の素朴な雰囲気とは少し異なります。海辺の町でありながら、集落は海よりも高い場所に広がり、起伏ある地形に沿って曲がりくねった道が続いています。そこには、船主や船頭たちが暮らした大きな屋敷が点在し、それらを囲む板塀が印象的です。

板塀は屋敷だけでなく、民家や蔵の外壁にも用いられており、町全体に統一された素材の美しさを生み出していました。そして、笏谷石の石垣が階段にも使われており、その端正な佇まいからも、この地がかつて豊かに栄えていたことが静かに伝わってきます。

韓国の写真家、具本昌(koo bohnchang)さんの展示が、設計をさせていただいたfactory zoomer / lifeにて開催されていたため、約一年ぶりに金沢を訪れました。自ら設計した建築に、多くの人が足を運び、その空間の中で自然...
26/04/2026

韓国の写真家、具本昌(koo bohnchang)さんの展示が、設計をさせていただいたfactory zoomer / lifeにて開催されていたため、約一年ぶりに金沢を訪れました。
自ら設計した建築に、多くの人が足を運び、その空間の中で自然と人々が集い、時間を過ごしている姿を見ることは、大きな喜びであると同時に、毎回新たな学びを与えてくれます。

そのような豊かな時間を金沢で過ごした翌日、石川県加賀市にある江沼神社 長流亭へ向かいました。長流亭の存在を知ったのは、建築家・竹原義二さんの著書『日本建築に学ぶ設計手法』で紹介されていたことがきっかけです。以来、いつか訪れてみたい場所のひとつでした。

長流亭は、旧大聖寺川のほとりに建つ建築です。現在とは川の流れや水位が大きく異なり、かつては大聖寺川と熊坂川の合流地点に、まるで水面へ浮かぶように建っていたそうです。水位も、今よりおよそ一メートルほど低かったといわれています。

何より心を奪われたのは、建物をぐるりと取り囲む開口部の美しさでした。周囲の景色を取り込みながら、建築そのものの立面的な美しさを際立たせています。その佇まいに触れると、小堀遠州の設計と伝えられていることにも深く頷かされます。

なお、内部見学には電話またはメールでの事前予約が必要とのことです。訪問の際は、ぜひご注意ください。

蘇州杭州からは新幹線で直接蘇州へ向かいました。車窓からの景色には、まだ若い木々ではありましたが、至るところで植樹が進められている様子が見えます。街ではバイクのほとんどが電動バイクで、車も電気自動車やハイブリッド車が多く走っています。ナンバー...
15/04/2026

蘇州

杭州からは新幹線で直接蘇州へ向かいました。車窓からの景色には、まだ若い木々ではありましたが、至るところで植樹が進められている様子が見えます。

街ではバイクのほとんどが電動バイクで、車も電気自動車やハイブリッド車が多く走っています。ナンバープレートの色分けによってそれらが一目で分かる仕組みになっており、交通量は多いにもかかわらず、驚くほど静かな車道でした。ただ、自分で運転する姿はなかなか想像できませんでした。

そして楽しみにしていた、運河のある都市・蘇州へ。水路のある街にはやはり特別な魅力があります。平日にもかかわらず観光客であふれ、多くの人々が華やかな衣装をまとい、思い思いのポーズで写真撮影をしている光景は実に印象的でした。

その賑わいに少し疲れて裏通りへ入ると、そこには一転して驚くほど静かな世界が広がっていました。まるで時間を遡ったかのような街並みです。閉店間際の市場へ駆け込む人々や、片付けに追われる商人たちの姿には、どこか懐かしさがありました。

華やかな表通りの熱気と、裏路地に流れる静かな時間。その対比こそが、蘇州という街をより深く心に刻む風景だったように思います。

吉田隆人

住所

Kyoto-shi, Kyoto
6040064

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